保土谷化学健康保険組合

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[2025/05/29] 
ティーペック健康ニュース「大人もかかるアトピー性皮膚炎 予防と対策のコツ」

第392号 2025/5/27

 

ティーペック健康ニュース

 

発行:ティーペック株式会社

 

今月のテーマ

「大人もかかるアトピー性皮膚炎 予防と対策のコツ」

 

アトピー性皮膚炎は子供の病気というイメージが強いですが、実は大人になってから発症したり、成長するにつれて治ったはずが大人になって再発したりすることも少なくありません。近年、20~40代の発症・再発が増加傾向にあるともいわれており、「大人のアトピー」として注目されています。本記事では、アトピー性皮膚炎の基礎知識から大人特有の悪化要因、そして日常生活での具体的な対策をご紹介します。

 

大人の肌も悩ませる!アトピー性皮膚炎の正体

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹を主な症状とする皮膚の病気です。良くなったり、悪くなったりを繰り返しながら慢性的な症状が表れます。アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下することで、通常なら問題にならないほどの軽い刺激に対しても過敏に反応し、炎症を起こしやすくなります。乳幼児や子供の頃に発症し、成長するにつれて症状が治まる人が多いですが、大人になっても症状が残る人もいます。

アトピー性皮膚炎の最も特徴的な症状は「強いかゆみ」です。かゆみに伴って、赤みを帯びた湿疹や乾燥した肌、小さな水ぶくれ、かさぶた、皮むけなどの症状が表れます。かゆみは特に夜間に強くなることが多く、「かゆくて目が覚めて眠れない」「かきむしって血だらけになる」こともあります。強くかくことで皮膚を傷つけると、それがさらに症状を悪化させてしまいます。

子供と大人ではアトピー性皮膚炎には症状の表れ方に違いがあり、子供の場合は顔全体や顎の部分、肘や膝の内側などに「ジュクジュクした湿疹」が出やすいのに対し、大人は首や顔、胸、背中などの上半身に症状が出やすいとされています。大人では皮膚が乾燥してザラザラになったり、繰り返しかくことで皮膚が厚く硬くなってゴワゴワになったりするほか、シミのような色素沈着が皮膚に残ることもあります。

 

なぜ大人になって急に?アトピー発症・再発のメカニズム

アトピー性皮膚炎は子供に多い病気ですが、子供の頃には症状がなかった人や、一度治まっていた人でも、大人になってからアトピー性皮膚炎を発症・再発することがあります。大人になってからアトピー性皮膚炎を発症したり再発したりする背景には、複雑な要因が絡み合っています。

アトピー性皮膚炎にかかる人には、もともと「アトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)」があるといわれています。アトピー素因を持っているからといって必ずアトピー性皮膚炎を発症するとは限りません。しかし、大人になると、就職や転職、結婚、出産などの生活環境の大きな変化や不規則な生活、睡眠不足、偏った食生活など、心身に負担がかかることも増えます。これらの要因が影響して皮膚のバリア機能が低下し、潜在していたアトピー素因に対応しきれずにアトピー性皮膚炎を発症してしまうのです。

加えて、ストレスも大きな影響を与えます。職場での長時間労働や人間関係、責任の増加、育児の負担など、多くの人が日常的にさまざまなストレスにさらされています。過剰なストレスは自律神経のバランスを崩し、免疫系に影響を及ぼします。さらにストレスホルモンが分泌されると血行が悪くなり、かつては問題なかった刺激に対しても皮膚が過敏に反応します。このようなストレスの悪影響が重なると、アトピー性皮膚炎の症状が表れることにつながります。

大人のアトピー性皮膚炎は単一の原因ではなく、さまざまな要因が複合的に作用していますから、対策においても生活環境の見直しやストレス管理など、多角的なアプローチが重要となります。

 

肌を守る!アトピー対策の4つの柱

アトピー性皮膚炎と上手に付き合うためには、日常生活の中での継続的なケアが何よりも重要です。アトピー対策の基本となる4つの柱を説明します。

まず基本となるのが「肌の保湿」です。健康な肌は、水分をしっかり保持して外部の刺激から身を守るバリア機能を果たしていますが、アトピー性皮膚炎の肌はこのバリア機能が低下しています。そのため、保湿剤を使って積極的に水分を補給し、バリア機能を助ける必要があります。特に入浴後は肌の水分が蒸発しやすいため、体を拭いた後、すぐに保湿剤を塗ることがポイントです。入浴時はぬるめのお湯(38~40℃程度)につかり、ゴシゴシ洗わず手のひらで優しく洗います。入浴時間は15分程度にとどめ、皮脂を必要以上に落とさないようにしましょう。

次に「衣類の選択」が肌の状態に大きく影響します。肌に直接触れる下着やシャツは、通気性が良く刺激の少ない綿や麻などの天然素材を選ぶとよいでしょう。衣類の縫い目が肌に当たって刺激になることもあるため、縫い目を外側にして着用する工夫も効果的です。洗濯の際は洗剤が肌に残らないよう十分にすすぎ、柔軟剤の使用を必要最小限にとどめることで、肌への刺激を減らせます。

また、「清潔な室内環境」にすることがアトピー性皮膚炎の症状を悪化させないことにつながります。ダニやホコリはアトピー性皮膚炎を悪化させる要因となるため、こまめな掃除と換気が重要です。特に寝具は付着した汗や皮脂、フケなどがダニの温床になりやすいため、清潔に保ち週に1回程度は天日干しをしましょう。

これらのケアと並行して、「生活習慣の改善」によるストレス管理や食生活の見直しにも目を向けることが大切です。十分な睡眠と規則正しい生活は、肌の回復力を高め、免疫機能を正常に保つ助けとなります。自分に合ったストレス解消法を見つけてストレス管理にも取り組んでみてください。食事は規則正しく、バランスの取れた食生活を心掛けます。腸内環境を整えることがアトピー性皮膚炎の症状の改善に関係していることを示す研究が報告されているため、野菜や発酵食品などの腸内環境を整える食材を積極的に食べるとよいでしょう。

 

夏に向けて気を付けたい!紫外線と汗の対策

これから夏に向けて、アトピー性皮膚炎の方が特に注意したいのが「紫外線」と「汗」です。適切に対処しないと症状を悪化させる要因となってしまいます。

紫外線とアトピー性皮膚炎の関係は複雑です。少量の紫外線には症状を抑える効果がある一方、過剰な紫外線は症状を悪化させる可能性があります。紫外線対策としては日傘の使用、帽子や長袖の衣類の着用など日差しを避ける物理的な防御が基本です。日焼け止めを使う場合は、無香料・無着色の敏感肌用の物を選び、使用前に少量だけ皮膚に付けて異常が起こらないかを確認することをお勧めします。

付着した汗も皮膚に大きな刺激を与えます。汗に含まれる成分が肌に残ると、かゆみを引き起こすことがあるため、こまめに汗を拭き取る習慣が大切です。外出先でも使えるハンカチやタオルを常備し、可能であれば汗をかいた後はぬれたタオルなどで体を拭くと効果的です。通気性の良い衣類を選び、汗をかくことが分かっているときは必要に応じて着替えを準備しておきましょう。

室内では冷房による乾燥に注意しましょう。湿度50~60%を目安に調整し、必要に応じて加湿器を使用してください。扇風機やサーキュレーターを併用すると、エアコンの設定温度が高めでも快適に過ごせます。

 

最 後 に

大人のアトピー性皮膚炎は、長く付き合っていく必要がありますが、症状を悪化させる要因を理解し、適切なケアを続けることで十分にコントロールすることが可能です。

近年のアトピー性皮膚炎の治療は進化しており、以前から使われていたステロイド外用薬だけでなく、免疫系の特定の部分に作用し、炎症とかゆみを効果的に抑える新しいタイプの薬(生物学的製剤やJAK阻害薬など)も登場しています。症状が悪化して日常生活に支障が出るようであれば、我慢せずに皮膚科を受診してきちんと治療を受けましょう。

日々の小さなケアと対策の積み重ねが、肌の健康を守ります。ご自身の生活スタイルに合わせた無理のない方法で、継続的なスキンケアを心掛けてください。

 

原稿・社会保険研究所ⓒ

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