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ティーペック健康ニュース「ドライマウスの落とし穴 唾液の減少で起こるトラブル」
第393号 2025/6/26
ティーペック健康ニュース
発行:ティーペック株式会社
今月のテーマ
「ドライマウスの落とし穴
唾液の減少で起こるトラブル」
「口が乾いた状態が続いて違和感がある」「口の中がネバネバ・ヒリヒリして、息が臭い気がする」。もしかしたらそれは「ドライマウス」の症状かもしれません。ドライマウスは、口が粘つくといった比較的軽い症状から、食べ物が飲み込みづらく話しづらくなるなど、日常生活に支障を来す症状につながる場合もあります。本記事では、ドライマウスが引き起こすさまざまな健康トラブルや、意外な原因を解説します。また、日常生活での予防法や改善方法まで、詳しくご紹介します。
口が乾いているだけ?ドライマウスは病気の症状
ドライマウスは医学的には「口腔乾燥症」といい、さまざまな原因によって唾液の分泌量が少なくなり、口の中が不自然に乾燥している状態を指します。唾液は通常、1日に約1~1.5L分泌され、さまざまな役割を果たしています。大きな役割は消化を助け、味覚を感じやすくし、食べ物を飲み込みやすくすることにありますが、それ以外にも口の中の粘膜の乾燥を防ぎ、舌を動きやすくして会話できるようにする役割や、汚れを洗い流して細菌の繁殖を抑え、口臭を予防する役割があります。そのため、唾液の分泌量が減るドライマウスになると、さまざまな症状を引き起こします。
軽度であれば、口が粘つく、ヒリヒリする、口臭が強くなる、口内炎や虫歯、歯周病にかかりやすくなるなどの症状が表れます。重度になると、口の乾燥から舌や唇がひび割れて強い痛みを感じるようになり、食べ物が飲み込みづらく話しづらくなります。場合によっては、痛みや口の中の渇きで夜中に目が覚めてしまうことで不眠につながるなど、日常生活にも大きな影響が出てきます。
代表的な症状に当てはまる?ドライマウスかチェック!
海外の疫学調査を参考にすると、日本国内では約800万~3,000万人がドライマウスにかかっていると推定されており、多くの人にドライマウスの症状がある可能性があります。しかし、たまたま口が乾燥していたのか、それともドライマウスの症状なのか、判断に迷うかもしれません。そこで、以下の代表的なドライマウスの症状にどの程度当てはまるかをチェックしてみましょう。
当てはまる項目が多ければドライマウスの可能性が高いと考えられますので、お近くの歯科医院や内科の診療所などを受診し、医師に相談することをおすすめします。唾液の分泌を促す薬を使うなど、症状に合わせた治療が受けられます。
<ドライマウスの代表的な症状>
●喉が乾くので水分をよく取る
●夜中に水を飲むために目が覚める
●口の中がネバネバする
●口の中がヒリヒリと痛む
●口臭が気になる
●食べ物が飲み込みにくい
●食事をしたときに味に違和感がある、味が分かりにくい
●口内炎が頻繁にできる
●虫歯や歯周病になりやすい
あなたに合った対策は?原因別対策ガイド
ドライマウスの症状は、唾液の分泌量の減少などで口の中が乾燥することで起こります。唾液の分泌量が減少する原因にはさまざまなものが考えられるため、原因に合わせた予防法や対策が必要です。以下の表に主な原因とその対策をまとめましたので、確認してみましょう。
<唾液の分泌量が減少する主な原因とその対策>
原因 |
解説 |
対策 |
加齢 |
高齢(70歳以降)になるにつれて唾液を分泌する唾液腺の機能が弱まり、唾液の量が減少する。 |
●耳や顎の下にある唾液腺をマッサージして、唾液の分泌量を増やす。 ●入れ歯が合わず、食べ物をうまく噛むことができない場合は入れ歯を調整する。 |
口呼吸 |
鼻ではなく口で呼吸していると、息をするたびに唾液が蒸発するため、口の中が乾燥しやすくなる。 |
●口呼吸が癖になっている場合は、意識して鼻呼吸にする。 ●鼻づまりなどの症状がある場合は医療機関を受診して治療を受ける。 |
食生活 |
唾液は噛むことで分泌されやすくなるため、柔らかい物ばかりを食べる、早食いであまり噛まずに食べるという食生活だと唾液の分泌量が減少する。 |
●よく噛んで食べることを意識し、早食いを避けてゆっくり食事を取る。 ●糖分が含まれていないキシリトール入りのガムを噛むようにする。 |
ストレス |
緊張・不安が多い場合や強いストレスが継続している場合は、唾液を出すための自律神経が働かなくなることで、唾液の分泌量が減少する。 |
●自分に合うストレス対処法を見つけてストレスから解放される時間をつくる。 ●強いストレスが続く場合は、必要に応じて心療内科や精神科を受診する。 |
飲酒・喫煙 |
飲酒や喫煙は唾液の分泌量を減少させるため、口の中が乾燥しやすくなる。 |
●お酒を飲む量を減らすととともに、お酒を飲まない日をつくる。 ●禁煙する。 |
薬・治療の副作用 |
薬の中には副作用で唾液の分泌量が減少するものがある。また放射線治療で唾液腺が障害を受け、唾液の分泌量が減少する場合がある。 |
●医師や薬剤師に相談して薬を変えたり量を減らしたりするなど、治療内容を調整する。 |
病気の症状 |
糖尿病、腎臓病、脳卒中、甲状腺機能障害、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな病気に関連して唾液の分泌量が減少したり口の中が乾燥したりする場合がある。 |
●必要に応じて医療機関を受診し、医師の治療を受ける。 |
ケア用品も効果的!保湿剤やマウスピースなどを活用しよう
ドライマウスの対策は、まずは原因ごとの対策が基本ですが、口の中の乾燥を防ぐケア用品が販売されていますので、それらを活用することも効果的です。
まず、紹介したいのは口の中の水分を保つ効果が期待できる保湿剤です。保湿剤には大きく分けてスプレータイプ、ジェルタイプ・洗口液タイプの3種類があります。症状や用途に合わせて使い分けるのがおすすめです。スプレータイプは、液体の保湿剤を口の中にスプレーするもので、手軽で使いやすい分、効果の持続時間が短くなっています。逆にジェルタイプは、粘性が高いジェルを口の中に塗るもので、持続時間は長いのですが口の中がネバつきやすいです。洗口液タイプは、1日に数回程度、口に含んでうがいを行い、口の中の洗浄と殺菌を行うものです。保湿剤はドラッグストアなどで購入することができます。
次に紹介したいのはマウスピース(モイスチャープレート)です。医療機関でその人の口の中の形状に合わせて作成し、寝る前に保湿剤などを入れて上顎に着けて使います。唾液がよく分泌される上顎を覆うことで唾液の蒸発を防ぎ、口の中を乾燥しにくくします。
ケア用品は使用する環境や症状に合わせて、上手に選んでうまく使い分けましょう。
最 後 に
ドライマウスは、単に口が乾燥しているだけと侮られがちですが、食事の楽しみを奪い、会話を困難にし、睡眠の質まで低下させる可能性のある症状です。幸いなことに、適切な対策で改善が可能ですので、症状に気付いたら早めに専門家に相談し、原因に合わせた対策を取りましょう。加齢や生活習慣が原因の場合は、すぐに効果が表れないこともありますが、諦めずに継続することが大切です。
日々の小さな習慣の積み重ねが口の健康を取り戻し、毎日の生活を豊かにしていきますので、辛抱強く改善や治療に取り組んでいきましょう。
原稿・社会保険研究所ⓒ