保土谷化学健康保険組合

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[2025/11/25] 
ティーペック健康ニュース「『睡眠負債』を解消する7つの習慣 疲れがとれない原因と対策」

第398号 2025/11/25

 

ティーペック健康ニュース

 

発行:ティーペック株式会社

 

今月のテーマ

「『睡眠負債』を解消する7つの習慣

疲れがとれない原因と対策」

 

「しっかり寝たはずなのに、朝起きるのがつらい」「疲れがとれない感じが続いている」―こんな経験はありませんか。現代社会では、多忙でストレスの多い生活を続ける中で知らず知らずのうちに「睡眠負債」を抱えている人が増えています。睡眠負債を抱えたままの生活が続くと、深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。本記事では、睡眠負債のメカニズムと健康への悪影響を解説し、疲れを根本的にとるために睡眠負債を解消する7つの習慣をご紹介します。

 

睡眠負債が心と体に与える深刻な影響

睡眠負債とは、日々の睡眠不足が借金のように蓄積され、その結果として心身の健康に悪影響を及ぼしかねない状態を指します。例えば、本来7時間の睡眠が必要な人が毎日5時間の睡眠を続けた場合、1日当たり2時間の睡眠負債が発生し、1週間で14時間もの睡眠負債がたまります。その状態では1日の睡眠で疲れを解消しきれず、目覚めた時点で疲労感が残ることになります。また、休日に少し長く眠る程度では、睡眠負債をすべて返済することはできません。

睡眠負債は健康面で体に深刻な影響を与えます。まず、免疫機能の低下で風邪などの感染症にかかりやすくなり、回復も遅くなります。さらに、食欲を調節するホルモンのバランスが崩れることで食べ過ぎから肥満を招き、長期的には糖尿病や高血圧、心疾患などの生活習慣病のリスクが高まります。加えてうつ病などの精神的な不調を引き起こす原因の一つになるだけでなく、近年の研究では将来の認知症リスクが増加することも明らかになっています。

また、仕事への影響として、集中力や判断力、作業能力の低下でパフォーマンスを十分に発揮できなくなります。1日4時間睡眠を続けた際のパズルの成績変化を調べる実験によれば、4時間という短時間の睡眠を続けるほどミスが増えていく結果となりました。また、覚醒時間と作業能力の関係を調べる実験では、24時間以上眠らない状態では飲酒をしている状態と同程度の作業能力しか発揮できなかったと報告されています。睡眠負債がたまり、出社した時点で疲れている状態では、作業能力の低下に加えて仕事に対する意欲が湧かなくなり、積極的に働くことはできません。

恐ろしいのは、睡眠負債がたまっている状態は自覚しづらいという点です。慢性的な睡眠不足の状態に体が慣れると、睡眠がまったく足りていないのに眠気を感じにくくなっていきます。睡眠負債を放置すると、それほど眠気を感じていないのに気が付かないうちに仕事のミスが増え、生活習慣病が進行してしまっていたという結果になりかねません。

 

なぜ疲れがとれないのか?睡眠の質を悪くする要因

毎日眠っているのに疲れがとれず、睡眠負債がたまってしまうのは、睡眠の「量(睡眠時間)」と「質(睡眠休養感)」のいずれか、あるいは両方に問題があるためです。良質な睡眠で「気持ちよく休めた」と感じるには、睡眠時間という量を確保するとともに、睡眠の質を良くすることが重要です。

睡眠時間について、近年の日本では成人に必要とされる6~8時間の睡眠時間を確保できていない人が非常に多くなっています。厚生労働省の調査によれば、日本人の平均睡眠時間は年々短くなっており、特に20歳以上の人では6時間未満の睡眠しかとれていない人が男性38.5%、女性43.6%に上っています(「令和5年 国民健康・栄養調査報告結果の概要」より)。睡眠時間が短くなるほど病気のリスクが高まることから、健康を守るためには1日の睡眠時間を少なくとも6時間は確保する必要があります。忙しい生活の中で難しい部分があるかもしれませんが、意識して睡眠時間を増やすようにしていきましょう。

睡眠の質を良くするための工夫には、寝具や寝室の環境だけでなく、日中の生活習慣、就寝前の行動、コーヒーなどの嗜好品の取り方など、さまざまな方法があります。睡眠負債の解消につながる習慣を次節で解説しておりますので、ぜひ実践してみてください。

なお、休日にまとめて「寝だめ」をする習慣がある人も少なくないかもしれませんが、睡眠を「ためる」ということはできず、寝だめでは眠気を完全に解消することにつながりません。平日の睡眠負債を休日の長時間の睡眠で返済するやり方は、不規則な睡眠習慣で体内時計のリズムを乱し、まるで時差が大きい地域へ海外旅行を繰り返すのと同じように、体に「時差ぼけ」状態をつくりだしてしまいます。このような「社会的時差ぼけ」は単に睡眠の質を悪くするだけでなく、生活習慣病の発症リスクを高めることが報告されており、健康を害する可能性のある危険な状態です。睡眠負債の返済は、規則正しい睡眠習慣を続けながら行うことがとても大切です。

 

今日から実践!睡眠負債を解消する7つの習慣

ここでは睡眠負債を効果的に解消し、質の良い眠りを手に入れるための7つの習慣をご紹介します。ぜひ実践して睡眠負債を返済していきましょう。

 

●習慣1:一定の就寝・起床時間を守る

体内時計を整えるため、毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きることを心掛けましょう。週末も平日と1時間以上ずらさないことが理想です。最初はつらく感じるかもしれませんが、2週間ほど続けると決まった時間に自然に眠くなり、いつもの時間に目が覚めるリズムが身に付いてきます。起床後に太陽の光を浴びるようにすると、体内時計のリズムが整い、夜の睡眠の質が改善します。

昼寝は睡眠負債の解消のための効果的な手段の一つです。しかし、長時間の昼寝は夜の睡眠に影響を与えてしまうため、逆効果になります。昼寝は15分から30分程度までにとどめることが大事です。

 

●習慣2:寝る1時間前からデジタル機器やテレビの使用を控える

スマートフォン、タブレット、パソコン、テレビなどは、脳を覚醒させて睡眠の質を悪くします。使用するのは就寝1時間前までと決めて、就寝の直前は使用しないようにしましょう。スマートフォンやタブレットなどの小型のデジタル機器はベッドにまで持ち込めてしまうため、「就寝するはずだったのについずっと使い続けてしまった」ということにもなりかねません。それらの機器は寝室には持ち込まず、別の部屋に置いておくようにしてはいかがでしょうか。

 

●習慣3:寝室環境を睡眠のために最適化する

快適な睡眠には適切な環境づくりが不可欠です。寝室の室温は18~22℃程度、湿度は50~60%に保ちましょう。寝具は季節に合った清潔なものを使用し、就寝時は室内をできるだけ暗くします。必要であれば遮光カーテンやアイマスクなども活用してください。

眠るためには静かで落ち着いた環境が大事ですので、過剰な騒音に対しては耳栓の使用が効果的です。ただし、場合によっては逆に適度な音量の環境音(雨音や川のせせらぎなど)が流れているほうがリラックスできて眠れるということもあります。自分に合った〝静けさ″を探してみましょう。

 

●習慣4:朝食は必ず食べて、夕食は就寝の3時間前までに済ませる

朝食は体内時計のリズムの調整に重要な役割を果たしています。朝食を食べることで体が朝からしっかりと活動できる準備が整い、夜の就寝時間が後ろにずれなくなることで規則正しい時間に眠ることができるようになります。

夕食は就寝の3時間前までに済ませ、寝る直前の間食は控えましょう。就寝時に消化のために胃腸が活発に活動していると、深い眠りに入ることができず眠りが浅くなってしまいます。どうしても遅い時間に食べる必要がある場合は、消化の良いヨーグルトやバナナ、ホットミルクなど軽いものにとどめてください。

 

●習慣5:カフェイン、アルコール、タバコを控える

コーヒーや緑茶、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインには覚醒作用があり、個人差がありますがその効果は3~7時間以上続きます。また、カフェイン摂取量が1日に400mg(コーヒーの場合はカップ4杯、500mLペットボトル1.5本分)を超えると、摂取が1日のどのタイミングであっても睡眠に悪影響を与えます。夕方以降はカフェインの含まれる飲料を控えるとともに、1日のカフェイン総摂取量を少なくするように心掛けましょう。

アルコールは一時的に眠気を誘いますが、中途覚醒を促して睡眠の質を悪くします。このため、飲酒をする場合は就寝の4時間前までにして、適量とすることが重要です。「寝酒」は睡眠の質を悪くするだけでなくアルコール依存症になる危険性があるため、行わないでください。

意外かもしれませんが、タバコも睡眠の質を悪くします。タバコに含まれるニコチンに覚醒作用があるためです。タバコを吸う人はぜひ禁煙してください。

 

●習慣6:日中に適度な運動をする

日中の運動は睡眠の質を大きく向上させます。息が弾み軽く汗をかく程度のウォーキングや軽い筋力トレーニングなどを1日60分程度行うことを目標とし、少しずつ生活に運動を取り入れてみてください。ただし、就寝直前に激しく体を動かすと体が興奮して寝付きが悪くなってしまいます。運動する場合は就寝の2~4時間前までにして、夜に行うのであれば軽いストレッチやヨガなど、リラックス効果のある運動にしましょう。

 

●習慣7:寝る前のリラックスタイムをつくる

入眠をスムーズにするため、自分なりのリラックス方法を見つけましょう。ぬるめのお風呂にゆっくりと入ったり、アロマオイルの香りを楽しんだり、深呼吸や瞑想を行ったりするのが効果的です。

ここでは就寝前にリラックスできる方法の一つとして「4-7-8呼吸法」をご紹介します。まず楽な姿勢で仰向けになり、舌を上顎に軽く当てます。その状態のまま、「4秒で鼻からゆっくりと静かに息を吸う」「7秒息を止める」「8秒かけて口から息を完全に吐き出す」というサイクルを3~4回繰り返します。呼吸のペースは絶対ではありませんので、自分のやりやすいペースで大丈夫です。ゆっくりとした深い呼吸を続けることで心が落ち着き、自然な眠気を誘います。

 

最 後 に

 

日本人は世界的に睡眠時間が短いことが指摘されており、OECD(経済協力開発機構)が2021年に発表した各国の比較では、日本人の睡眠時間は調査対象となったOECD加盟33ヵ国の中で最も短いとされています(「OECD Gender data portal.」より)。OECDの報告では日本人の平均睡眠時間は7時間24分とされていますが、実際には多くの人が6時間未満の睡眠時間となっており、睡眠負債がたまってしまっています。睡眠時間が6時間を下回ると死亡リスクが高まることが報告されていることから、大変危険な状態だといえます。

「よく寝た」と気持ちよく目覚める経験は何事にも代えられないものです。ぜひ睡眠負債を解消する習慣を実践し、良質な睡眠で健康を守りましょう。

原稿・社会保険研究所ⓒ

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