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ティーペック健康ニュース「隠れ脱水にご用心 冬場の水分補給の重要性」
第399号 2025/12/22
ティーペック健康ニュース
発行:ティーペック株式会社
今月のテーマ
「隠れ脱水にご用心 冬場の水分補給の重要性」
脱水症状と聞くと、真夏の炎天下で起きるものというイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、実は冬は「隠れ脱水」のリスクが高まる時期であることをご存じでしょうか。特に高齢者は脱水に気付きにくく、その結果として脳梗塞などの重篤な病気のリスクが高まります。本記事では、冬場に起こりやすい隠れ脱水のメカニズムと、その予防法についてご紹介します。
体内の水分が不足する「脱水症」
私たちの体は、その多くが水分で構成されており、成人の場合は体重の約60%を水分が占めています。この体内の水分は、血液として体中に栄養や酸素を運んだり、尿で老廃物を排出したり、汗をかくことで体温を調節したりと、生命を維持するために欠かせない役割を果たしています。
通常、私たちは飲み物や食事から水分を摂取する一方で、尿や便、汗、呼吸などを通じて水分を排出しており、体内の水分量が一定に保たれています。しかし、何らかの原因で水分の摂取量が減ったり、排出量が増えたりすると、体内の水分バランスが崩れて水分量が不足する「脱水症」になります。
脱水症になると体にさまざまな影響が表れます。体重の2%ほどの水分がなくなると、喉の渇きを感じて水分が欲しくなります。それでも水分を取らないと食欲がなくなり、めまいを起こしたり、ぼんやりしたりし始めます。5%ほどの水分が失われると、頭痛、吐き気、ふらつき、手足の震えなどの症状が現れ、体内から水分が失われるほど悪化していきます。10%ほどの水分が失われると、体がけいれんを起こすようになり、失神するなど重篤な症状が現れます。そして、体重の20%の水分が失われたときには、尿を出すことができなくなり、命の危険を招きます。
即座に重篤な症状が現れるほどの脱水症でなかったとしても、体内の水分が少なくなるとさまざまな体調不良や病気のリスクにつながります。水分不足で喉などの粘膜が乾燥すると、細菌やウイルスが体に侵入しやすくなり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。水分不足を補うために大腸でより多くの水分を吸収しようとすることで、便が固くなり便秘になりやすくなります。水分不足の影響が皮膚に表れると、皮膚が乾燥することで肌荒れの原因になります。
水分不足の影響で最も恐ろしいのは、血管内に血栓(血の塊)ができやすくなることです。体から水分が減少すると血液が濃くなってドロドロになりやすくなります。その結果、血管内で血栓ができやすくなり、血栓で血管が詰まる脳梗塞や心筋梗塞などを発症するリスクが高まります。いずれも命の危険のある重篤な症状を起こし、後遺症を残す可能性がある病気ですから、体の水分不足が招く症状はあなどれないのです。
冬場に注意が必要な「隠れ脱水」
夏の脱水は、暑さによる発汗で急激に体内の水分が失われることで起こります。一方、冬の脱水は、喉の渇きを感じないまま体から少しずつ水分が失われていくため、気が付かないうちに脱水状態になっている「隠れ脱水」になりやすくなっています。
冬は寒くて汗をかかないように感じていても、実際には体温調節のために汗をかいており、汗で失われる水分は少なくありません。さらに湿度が低下して乾燥しており、室内では暖房を利用していることから、皮膚や呼吸から蒸発して失われる水分量が増加します。しかし、気温が低い冬は、体が水分を欲しているサインに気付きにくく、水分を摂取する機会が減りがちです。これらの結果として、知らず知らずのうちに体内の水分が少なくなり、隠れ脱水の状態に陥ってしまうのです。
特に注意が必要なのは高齢者です。高齢者は体が水分を保持する機能が弱まり、体内の水分量は体重の50%程度と若い世代よりも少なくなっています。そこに加齢による喉の渇きを感じる機能の低下や、腎臓の機能低下で体の水分バランスを調整する力が弱まることで、隠れ脱水になりやすくなっています。
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感染症の影響による脱水に注意
冬場の脱水リスクをさらに高めるのが、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症です。これらの感染症にかかると、発熱で体温が上昇して大量の汗をかき、体内から通常よりも多くの水分が失われます。さらに、ノロウイルスによる急性胃腸炎では、激しい嘔吐や下痢により短時間で急速に脱水状態に陥る危険性があります。 感染症にかかった際は、特に注意深く水分補給を行う必要があります。嘔吐や下痢の症状がある場合には、体内から水分だけでなく塩分も失われているため、スポーツドリンクや経口補水液を少量ずつ頻繁に摂取するようにしましょう。症状が重く水分が取れない状態が続く場合は、すぐに医療機関を受診します。もし意識に異常がある場合には、躊躇せずに救急車を利用してください。 |
こんな症状は要注意!隠れ脱水のサイン
隠れ脱水を早期に発見するためには、体からのサインを見逃さないことが大切です。次のような症状がある場合は、隠れ脱水の状態にある可能性があります。
●口の中が粘つく、唇が乾燥してひび割れる
体内から水分が減ると唾液が分泌される量が減少するため、口の中の状態に影響が表れます。口の中が粘ついたり、唇が乾燥してひび割れたりしている場合は、隠れ脱水の症状かもしれません。
●尿の色が濃い、尿の量が減った、トイレの回数が減った
健康な状態の尿は薄い黄色ですが、体内の水分が少なくなると、尿の水分が減って濃度が高まることで尿の色が濃い黄色やオレンジ色になります。尿の量が減ったり、トイレに行く回数が減ったりすることも隠れ脱水のサインです。
●皮膚をつまんでもすぐに元に戻らない
水分不足になると皮膚の弾力性が失われ、皮膚をつまんで離したときに元に戻りにくくなります。手の甲の皮膚をつまんで離したとき、元に戻るまでに3秒以上かかる場合には、隠れ脱水の可能性があります。
●指の爪を押したときにすぐに色が戻らない
指の爪の後ろにある毛細血管には血液が流れているため、爪の色はピンク色をしています。爪を指で押すと、毛細血管から血液が押しのけられることで爪の色が一時的に白くなります。指を離したとき、白からピンク色に戻るまでに3秒以上かかる場合は隠れ脱水の可能性があります。
●頭痛、めまい、ふらつき、疲労感
脱水状態では頭痛やめまい、ふらつきなどの症状が現れることがあります。これは脳への血流が不足することで起こる症状です。疲れやすくなったり、ぼんやりして集中力が低下したりすることもあります。
高齢者では、元気がなくなり、ぼんやりとした様子が続く場合や、いつもより食欲が低下している場合は注意が必要です。筋肉が思うように動かせなくなったり、バランス感覚が低下したりして、転びやすくなっている場合は、脱水の影響かもしれません。高齢者は自分で症状を訴えにくいこともあるため、家族や周囲の人が日頃から様子を気に掛けることが重要です。
冬の水分補給のコツと実践的な予防法
成人の場合、1日に必要な水分量はおよそ1.5Lが目安です。大きなペットボトル1日1本を目標に、水分を取るようにしましょう。ただし、一度に大量に飲むのではなく、コップ1杯程度の量をこまめに飲むことが大切です。体は一度に吸収できる水分量に限りがあるため、少量ずつ頻繁に摂取する方が効率よく水分を補給できるからです。
冬の隠れ脱水を防ぐには、意識的に水分を摂取する習慣が欠かせません。水分補給は「喉が渇いているとき」ではなく、「時間・タイミングを決めて飲む」ようにします。例えば、起床時は就寝中に失われた水分を補うために、コップ1杯の水を飲みましょう。就寝前にも同様にコップ1杯の水を飲むようにすると、夜間の脱水を予防できます。お風呂の入浴前と入浴後に水分補給することも大切です。
食事は1日3回、規則正しく食べるようにしましょう。食品にも水分が含まれていますので、しっかり食べることで水分が補給できます。加えて、食事やおやつの時間に一緒に水やお茶を飲むようにすると、自然な形で摂取する水分量を増やせます。冬は冷たい飲み物を飲むのがつらい場合もありますので、白湯や温かいスープなど、温かい飲み物を活用するとよいでしょう。体も温まって一石二鳥です。
ただし、飲み物の種類には注意が必要です。コーヒーや緑茶、紅茶などに含まれるカフェインには利尿作用があり、尿として排出される水分量が増えてしまいます。これらの飲み物を楽しむこと自体は問題ありませんが、水分補給としてはカフェインの含有量が少ない麦茶やほうじ茶、白湯などが効果的です。また、お酒に含まれるアルコールにも強い利尿作用があるため、お酒を飲む際には合間に十分に水分を補給することを忘れないでください。忘年会や新年会などでお酒を飲む機会が増えがちですが、過剰な飲酒は控えるようにしましょう。
室内では加湿を行うことも対策になります。室内の湿度は40~60%に保つのが理想です。湿度計を置いて定期的にチェックし、乾燥している場合は加湿器を使用しましょう。加湿器がない場合は洗濯物を室内に干したり、ぬれたタオルを掛けたりするだけでも効果があります。そのほかにも室内に観葉植物を置くようにすると、自然な加湿で室内の湿度を保ってくれます。
高齢者の隠れ脱水を防ぐためには、周囲のサポートが欠かせません。定期的に「お茶を飲みませんか」などと声を掛けて水分摂取を促すことが大事です。高齢者の目につきやすい場所に飲み物を置くようにするのもお勧めです。簡単なチェック表を作成し、飲み物を飲むたびに印を付けるようにすると、水分不足がチェックできるだけでなく、水分補給に対する意識が高まることで水分の摂取量を増やすことにつながります。
最 後 に
冬場の隠れ脱水が怖いのは、気付かないうちに症状が悪化している点です。夏場のように汗をかかないからといって油断せず、意識的に水分を摂取することが大切です。喉が渇いたと感じる前に水を飲む習慣をつけることで、体に必要な水分量を維持できます。
高齢者のいるご家庭では、家族が積極的に声を掛け、水分補給をサポートするようにしましょう。日頃から様子を見るようにして、気になる症状があれば早めに対応することで、症状の重症化と万が一の事態を防げます。
原稿・社会保険研究所ⓒ





