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ティーペック健康ニュース第322号~「若いうちから蓄積される認知症のリスク」
第322号 2019/7/10
ティーペック健康ニュース
発行:ティーペック株式会社
今月のテーマ『若いうちから蓄積される認知症のリスク』
「認知症は高齢者の病気だから、自分にはまだまだ関係ない」なんて思っていませんか? でも、それは大きな思い違いです。実は若いうちから認知症のリスクは蓄積されています。
認知症で最も多いのがアルツハイマー型認知症です。その原因となるアミロイドβ(脳細胞の老廃物)は、発症の25年前から蓄積が始まっているといわれています。例えば70歳で認知症になった人は、バリバリ働いていた40代半ばから、すでに脳に異常が生じ始めていたのです。
また、アルツハイマー型認知症と、その次に多い脳血管性認知症は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病によって発症の可能性が高まります。今、ちょっと血圧や血糖値が高かったり、肥満気味で運動不足、などという人は、知らないうちに認知症のスタートラインに立っているかもしれません。
生活習慣病が認知症の可能性を高める原因に!
■糖尿病でアミロイドβがたまりやすくなり、アルツハイマー型認知症に
糖尿病は、血糖値(血液に含まれる糖分の濃度)の高い状態が続く病気です。血糖は、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンによって一定の値になるようコントロールされています。しかし、インスリンが分泌されなかったり、働きが悪くなることで糖尿病を発症します。高血糖は全身の臓器に悪影響を与え、重篤な合併症を引き起こします。
血糖の異常が続くことで脳細胞に認知症の原因となるアミロイドβがたまりやすくなります。その結果、最終的には脳細胞が壊れて脳の認知機能の低下を招き、アルツハイマー型認知症を発症します。
糖尿病の人がアルツハイマー型認知症を発症するリスクは、糖尿病でない人と比べると4.6倍も高くなっています。また、糖尿病は動脈硬化の原因にもなるため、糖尿病の症状が進行すると動脈硬化も進行して、アルツハイマー型認知症のリスクだけでなく脳血管性認知症のリスクも増加します。
①糖尿病(インスリンの分泌異常)→②アミロイドβの蓄積→③アルツハイマー型認知症の発症 <発症リスクは4.6倍> |
■高血圧から動脈硬化が進行し、脳梗塞・脳出血の繰り返しで脳血管性認知症に
高血圧は、血液を全身に送る際に血管にかかる圧力が高くなる病気です。血管に過度な圧力がかかることで血管の壁が傷つき、次第に弾力性を失って硬くなる動脈硬化が進行します。動脈硬化が進行すると血管が詰まったり、破れやすくなることで、小規模な脳梗塞・脳出血を繰り返すようになります。その結果、次第に脳の機能が失われていき、やがて脳血管性認知症へと移行していきます。
高血圧の人が脳血管性認知症を発症するリスクは、高血圧でない人と比べると3.4倍であり、高い数値となっています。
①高血圧(動脈硬化の進行)→②脳梗塞・脳出血→③脳血管性認知症の発症 <発症リスクは3.4倍> |
生活習慣病の予防以外に 認知症予防で今から始めたい5つのアクション
読書や新聞、スマホなどで文章を読んだり、手芸や料理、ガーデニング、DIYなどで指先を使うと脳が活性化されます。
他人との交流が脳を刺激し、心の豊かさをもたらします。家族や同僚、仲間や地域の人と積極的に関わり、会話をするようにしましょう。
運動を定期的に行うことで脳機能がアップするという調査結果があります。週3日程度、30分ほどの運動を生活に取り入れましょう。
認知症の予防効果が認められている、ビタミンC・Eやβカロチンが含まれる野菜や果物、DHAやEPAが含まれる青魚を積極的に食べるようにしましょう。
脳は眠っている間に休息し、記憶を整理しています。睡眠不足は脳のダメージとなりますから、夜はぐっすり寝て、朝は日光を浴び体内時計をリセットしましょう。
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厚生労働省の推計によると、すべての団塊の世代の人が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、認知症発症者数は約700万人、65歳以上の高齢者の約5人に1人となる見込みです。とはいえ、認知症はいきなり発症するわけではなく、こうしている今も、脳の中で異変が起きつつある人がたくさんいるということです。
今回は認知症に関わる生活習慣病として、主に高血圧と糖尿病について触れましたが、脂質異常症や肥満症といった他の生活習慣病も重要な危険因子です。認知症の決定的な治療法が確立されていない現在、私たちにできる最善のことは、これらの生活習慣病の予防、または健康診断などにより生活習慣病の早期発見と早期治療に取り組むことです。
バランスの取れた食事や適度な運動と良質の睡眠など良い生活習慣を送ることは、認知症を発症する可能性を低くするばかりでなく、心筋梗塞や脳梗塞、がんなど多くの病気のリスクも減らします。人生を輝かせるのは健康づくりと考え、ぜひ一度生活習慣を見直してみてください。
原稿・社会保険研究所ⓒ