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ティーペック健康ニュース第330号~「新しい環境で、子供の不安に寄り添うためには」
第330号 2020/3/10
ティーペック健康ニュース
発行:ティーペック株式会社
今月のテーマ『新しい環境で、子供の不安に寄り添うためには』
春は子供たちにとって、卒業や入学、進級によるクラス替え、引っ越しによる転校など、環境に大きな転機がある季節です。期待に胸を膨らませる一方で、大きな不安を感じている子供もいるのではないでしょうか。
家族としても、この時季特有の子供の不安な気持ちをサポートし、いつにも増してしっかり見守ることが重要です。そしてそのためには、日頃から子供との丁寧なコミュニケーションを心掛け、子供の微妙な気持ちの動きに寄り添える、風通しの良い関係を築いておく必要があります。
新しい環境への適応のプロセスは、生まれ持った個性
新しい環境になじんでいくプロセスや時間というのは、子供によって違います。知らない空間、初めての人たちとの出会いを、最初から楽しめる子もいれば、抵抗感が強くて慣れるのに長い時間が必要な子もいます。
子供が環境に敏感で、新しい状況になかなかなじめないでいると、家族はつい「自分の育て方のせいではないか」と自責の念にとらわれてしまうかもしれません。しかし、子供の気質のタイプや個人差を調査した、アメリカの心理学者であるトーマス博士らが実施した「ニューヨーク縦断研究」によると、新しい環境への反応の仕方は、子供の持つ「生まれながらの気質」によるものと分類されています。
未知の場所にワクワクしながら入っていける子もいれば、嫌がって泣いてしまう子もいます。新しい環境、初めての人に出会ったときにどう適応していくかは、「その子の個性」と言ってもよいかもしれません。
不安のサインを早めにキャッチしよう
もともと生まれ持った気質であるのですから、適応に時間がかかる子供は、家族が焦ったところで、ゆっくり時間をかけないと新しい環境になじむことはできません。家族にとって大切なのは、子供が送ってくるサインをキャッチして、不安な気持ちに寄り添ってあげることです。
不安のサインというのは、幼いうちは「朝出掛ける前にぐずる」「登園・登校の際に親に泣き付く」など、気持ちと直結した行動をするので、家族としても分かりやすいでしょう。しかし、年齢が進むにつれて、言葉や態度で気持ちを表さない子供も出てきます。そのような場合は、日頃の様子と比べて変わった点はないか、以下のことに気を付けてみましょう。
【子供が発信する不安のサイン】
□ 表情が乏しくなった □ 無口になった □ いつもより近付いてくる
□ 家に帰った途端にはしゃぐことが増えた □ 甘えの行動が増えた
□ 聞き分けが悪くなった □ 反抗的な態度をとるようになった など
気持ちを受け止めて子供の話をしっかり聴こう
例えば、子供が「疲れた」と言って帰ってきたときに、何と言って返していますか? 「じゃあ今日は夜更かししないで早く寝なさい」などと返すと、子供にとって親との会話がさらなるストレスの原因となって、話す気が失せてしまいます。
このような場合は、「何だか疲れているようだね」と、子供の言葉をそのまま返してみてください。すると「実は学校でこんなことがあって…」と会話が広がりやすくなります。「聞く」ではなく、大切なのは気持ちを受け止めて「聴く」、つまり傾聴してあげることです。
よく、子供の話をしっかり聴かないで、すぐに「大丈夫」や「頑張れ」などと励ましてしまう人がいます。家族は子供にいつも前向きな気持ちを求めてしまいがちですが、不安や寂しさなど、ネガティブな思いを思い切り吐き出させてあげることで、子供は家族に「気持ちを分かってくれた」と安心感を持ち、新しい環境に向かう元気が生まれてくるのです。
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子供の心の問題が大人よりも深刻化しているのをご存じでしょうか。日本は先進国の中でも突出して若者の自殺が多い国といわれています。厚生労働省が発表した令和元年版の『自殺対策白書』によると、人口10万人当たりの全体の自殺率は、統計を取り始めた1978年以来最も低かったものの、20歳未満は過去最悪となり、若年層の自殺の深刻な現状が浮き彫りになりました。
同白書の分析によると過去10年間の小中学生や高校生らの自殺原因は、小中学生は「家族からのしつけ・叱責」「親子関係の不和」など家庭問題が起因となる動機が多く、高校生や大学生になると「学業不振」や「進路に関する悩み」「うつ病」などが目立ってきます。
思春期を過ぎると家族に悩みを話してくれなくなりがちですが、幼い頃から子供の話をよく聴き、話しやすい関係を築いておくことが、子供を不安な気持ちから救うことにつながるのではないでしょうか。
原稿・社会保険研究所ⓒ